生活保護受給者が、役所に隠れてこっそり仕事をしていました。これ、役所にばれたら後が大変です。すぐに申告にしてください!でも、実は、ばれにくい場合もあるんですよね。。
先日、このような通報電話を受けました。
「〇〇町に住んでいるAさんは、日雇いで月に20万円ほど稼いでいる。そして、役所へ生活保護の収入申告を行わず、生活保護費を月10万円もらっている。こんな奴が生活保護を受けていいのか。市役所は何をしているのか」との電話でした。
生活保護受給者は可能な限り仕事をする必要があり、仕事で得た収入については、毎月、市役所へ申告しなければなりません。収入があるのにわざと申告しなかった場合や、わざと少なめに申告した場合は、本来受給すべきの額以上に生活保護費を受給したことになり、不正受給となります。
では、今回の電話、どう対応するのでしょうか。
保護を受けているかどうか、それが問題
まず対応に苦慮するのが、Aさんが生活保護を受けているかどうかを相手に教えられないことです。このため、電話の相手に対しては、「もしAさんが保護を受けている場合には、必要な調査を行い、厳正に対処します」というような仮定形の対応になってしまいます。
ところが、そのことが電話の相手にはなかなか分かってもらえません。相手は「生活保護を受けていることは、周りの誰でも知っている。どうしてAをそんなにかばうのか。市役所は犯罪者の片棒を担ぐのか」などと言われてしまいます。
その人、どこで仕事してますか?
それでも何とか相手に事情を説明し、分かってもらえたとします。そして、今度は私から相手に尋ねます。「Aさんの仕事先の住所と会社名を教えてください」
すると、相手は怒りながらこう言います。「一般の市民である俺達がいちいち他人の仕事先まで知っているわけないだろう。それを調べるのも市役所の仕事だろ」
確かに、我々は生活保護受給者の就労収入について調査する権限はあります。しかし、市役所で全ての市民の勤務先を把握しているわけではありません。
Aさんの勤務先がきちんとした会社、つまり、給与支払報告書を市役所(市民税担当部署)に提出している会社であれば、市役所でもAさんの勤務先と給与額を把握できます。
ところが、Aさんのような日雇いの土木現場の場合は、会社が給与支払報告書を提出しない場合が多いです。そうすると、市役所には給与の支払情報が来ないわけですから、Aさんの勤務先も給料も調べようがありません。
もし、給与支払い報告書の提出がない会社でも、その会社を特定できれば、市役所からその会社へ調査することができます。でも、会社の特定すらできなければ、それもできません。生活保護受給者の中には手に職がない人や、それまでの経歴から、土木現場などでしか働けない人が結構いるんです。
そういう人達の中には、もしかしたら給与収入を申告していない人がいるかもしれません。しかし、市役所としても確実に給与収入を把握する手段がないため、それ以上の対応は難しいのです。このあたりが、現在の生活保護制度の限界だと思います。
調査結果はどうなった?
「調査して、結果がどうなったか説明してほしい」これもよく相手から言われます。この要望への対応はもうお分かりと思います。「調査結果はお答えできません」が答えです。そもそも生活保護を受けているかどうかを教えられないので、当然、調査結果も教えられないのです。
最終手段!?
今回の件を完全に解決するなら、Aさんが仕事をしている現場を押さえるしかありません。そのためには早朝から自宅での張り込み、職場までの尾行も必要かもしれません。結局、どこまで徹底するのか、という話だと思います。ケースワーカーが常に人員不足で忙しい中、さらに張り込みや尾行までするのは、私の職場では無理ですね。
10年ワーカー
でも、張り込みや尾行って、一度やってみたいなあ。 トレンチコートのえりを立てて、電柱の陰に隠れてみようかな。