精神手帳の正式名称は「精神障害者保健福祉手帳」といいます。一定程度の精神障害の状態にあることを認定する手帳です。
生活保護の現場でも、「あの人は精神手帳2級で障害者加算をもらっているのに、自分はもらえないとは、どういうことだ!」とおっしゃるかたがいます。
ネット上でも、精神手帳2級以上=障害者加算、という記事ばかりです。でも、それは正しくありません。
身体障害者手帳と精神手帳は、障害者加算の条件が違う
身体障害者手帳の場合、1・2・3級のどれかを持っていれば、障害者加算の対象となります。
精神手帳の場合、1・2級のどちらかを持っていれば障害者加算の対象になると一般的に言われますが、正確ではありません。
精神手帳の場合、手帳の等級=障害者加算、ではありません。
ポイントは、障害基礎年金の受給権の有無
精神手帳の場合、「障害基礎年金を受給する権利があるかどうか」が障害者加算のポイントになります。
「病状が障害基礎年金レベルかどうか」ではなく、「もし将来的に障害基礎年金レベルまで病状が悪化した時に年金を受給できる保険料納付条件を満たしているか」がポイントとなります。
障害基礎年金は、病状が悪化するだけで受給できるわけではありません。
障害基礎年金を受給するためには、病状悪化のほかに、年金保険料の納付状況が条件となります。
この年金保険料の納付状況が、精神手帳による障害者加算の認定に大きく影響します。
障害基礎年金の受給権がある場合
年金保険料の納付要件を満たしている場合、つまり障害基礎年金の受給権がある場合、精神手帳を持っているだけでは、障害者加算の対象になりません。
障害者加算の認定は、原則として身体障害者手帳か障害基礎年金の等級を根拠に行われます。
精神手帳の等級は直接の認定根拠になっていません。
つまり、
あなたは障害基礎年金の受給権があるのだから、もっと病状が悪化して障害基礎年金を受給するようになったら、障害者加算がつきますよ。
ということです。
なお、障害基礎年金の請求をした時点から障害者加算の対象になりますが、もし年金請求が却下された時は、それ以降の障害者加算はなくなります。
障害基礎年金の受給権がない場合
障害基礎年金の受給権がない場合、精神手帳1・2級を持っていれば障害者加算が認定されます。
え、逆じゃないの?と思われるかもしれません。
障害基礎年金の受給権がない場合は、いくら病状が悪化しても障害基礎年金を請求できません。
障害基礎年金の等級で障害者加算の判断をしようにも、そもそも年金の請求権がないのですから、障害基礎年金の等級で判断できません。
このため、障害基礎年金の受給権がない場合は、精神手帳の等級によって障害者加算の判断をしてもよい、と特別に定められています。
まとめ
- 精神手帳1・2級でも、障害基礎年金の受給権がある場合は、障害基礎年金の等級で障害者加算の判断をする。精神手帳の等級だけでは、障害者加算の対象にならない。
- 障害基礎年金の受給権がない場合は、精神手帳1・2級であれば障害者加算の対象になる。
根拠法令
- 「精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について」(平成7年9月27日 社援保第218号 厚生省社会・援護局保護課長通知)
- 「生活保護法による保護における障害者加算等の認定について」(昭和40年5月14日 社保第284号 厚生省社会局保護課長通知)