時々、このような匿名電話があります。「近所のパチンコ屋で生活保護受給者が毎日パチンコをしている。市役所は取り締まらないのか?」
生活保護受給者のパチンコの話題は、ヤフーでも時々取り上げられる定番ニュースです。結論から言いますと、生活保護受給者でもパチンコは許されます。パチンコをすることは違法行為ではないし、生活保護法にもパチンコを禁止する規定はありません。道徳的には問題かもしれませんが、道徳を根拠に行政が市民を指導することはできません。
でも、ギャンブル依存という病気、勝った場合の儲けの取扱い、パチンコを取り巻く市民感情。パチンコにはまる生活保護受給者は様々な問題を抱えています。
【H28年6月7日追記】
6月7日のヤフーニュースに、千葉県四街道市のこんなニュースが載っていました。
市「過度な飲酒、パチンコ慎むように」「従わぬなら生活保護停止も」 市民苦情受け掲示 /四街道http://www.chibanippo.co.jp/news/national/328674
これは、四街道市が生活保護受給者に対し、過度な飲酒やパチンコを慎むよう促した上で、指導に従わなければ生活保護を停止する場合がある、との趣旨の文書を約2年間、担当課の窓口に掲示していたことが分かった、との記事でした。
たぶん、四街道市の生活支援課の職員も、こういう文書を窓口に掲示していること自体忘れていたんじゃないでしょうか。それがどういうきっかけでこんな大きな話になったのやら。
過度な飲酒やパチンコを慎むこと、という程度であれば、私の勤務先でも保護受給者へ渡す書類の中に書いてありますし、珍しいことではないです。
それがこんな大きなニュースになってしまった原因は明らかで、保護の停止をチラつかせたからです。パチンコ程度で生活保護を停止するのは、明らかに行きすぎです。
それにしても、チラシ1枚でこんな大げさな話になるとは。ウチの役所の窓口に変な張り紙なかったかな?明日の朝見とかないと(汗)
パチンコにハマるという病気
遊びの範囲を超えるような額をパチンコにつぎ込む場合は、かなり問題です。実際、パチンコ代に有り金をつぎ込み、食費や家賃の支払いに困る人が時々います。この場合は、生活保護法の目的のひとつである「最低限度の生活の維持」ができているとは言えないため、何らかの指導が必要だと思います。
ただし、全ての生活費をパチンコにつぎ込む人に対して「パチンコをするな、ギャンブルをするな」と言っても効果はありません。それでパチンコが止められるぐらいなら、とっくに止めています。このような人は、金銭管理能力が著しく劣る場合やギャンブル依存症に近い状態になっている場合が多いです。
精神疾患などで金銭管理が十分にできない場合は、社会福祉協議会が行っている金銭管理サービス(日常生活自立支援事業)の利用を検討する。ギャンブル依存症が疑われる場合は、専門の医療機関の受診へつなげる。一見遠回りのようですが、このような対応が、生活保護法の目的のひとつ「自立を助長すること」への近道だと思います。
生活保護受給者のパチンコに対する市民感情
法的には許されている生活保護受給者のパチンコですが、苦情の電話に対応していると、市民の間では否定的な意見が圧倒的です。
「私たちは生活保護に頼らず、こんなに節約して暮らしているのに、税金で暮らしている生活保護受給者がパチンコとは何様だ」
こう言いたい気持ちは分かる気がします。むしろ、市民感覚に近いかもしれません。でも、生活保護法で禁止されていないことを、現場レベルで禁止することは逆に問題だと思います。もし、パチンコを禁止するというのであれば、国会できちんと議論をして、生活保護法を改正して対応すべきでしょうね。
2015 年(平成27年)に大分県別府市で、パチンコ店・競輪場を訪れていた生活保護利用者に対して、生活保護の停止という処分が行われたことが話題になりました。別府市の処分も感情的には分かる気もしますが、生活保護の停止が適切な処分とは言えないことは明らかです。ちなみに、この処分に対しては、その後、大分県から止めるように指導があり、今では行われていません。
パチンコで勝ったお金も収入申告が必要
パチンコでは負ける人がほとんどでしょうが、中には勝つ人もいるかもしれません。生活保護受給中に得た収入は、たとえ少額でも収入申告が必要です。もちろん、パチンコで勝った金も。
パチンコで勝った金が月額8,000円を超えると、超えた分だけ生活保護費を減らします。つまり、生活保護受給者がパチンコで月8,000円以上稼いでも無意味ということです。だたし、実際に収入申告があればの話ですが。パチンコで勝った金の申告、聞いたことないですね(苦笑)