読者のAさんから質問をいただきました。
読者のAさん
生活保護受給者がルート営業で自家用車を使用することは認められるでしょうか?
自家用車を通勤用に使える場合があるのですから、仕事で使える場合もあるのではないですか?
10年ワーカー
原則として生活保護受給者は自動車を保有することも運転することもできません。
では、例外的に仕事で自家用車を使用することが認められる場合があるのでしょうか。説明しましょう。
では、例外的に仕事で自家用車を使用することが認められる場合があるのでしょうか。説明しましょう。
生活保護制度上、仕事の種類や地理的条件によっては認められる可能性があります。ただ、それ以上細かい規定はありませんので、実務的には各福祉事務所の判断による部分が大きいです。詳しくは最寄りの福祉事務所へ尋ねた方がいいですね。
・・・と言っては身も蓋もありませんので、10年ワーカーとしての意見を述べたいと思います。
原則として自動車は保有不可。では、例外は?
生活保護の原則からは、自家用車を使わないでできる仕事を探しなさい、ということになります。それでもあえて自家用車を使う仕事に就くことを認めるためには、それだけの理由が必要です。
生活保護法上の取扱いについては、次のように定められています。
生活保護手帳別冊問答集 問3-14事業用品としての自動車は当該事業が事業の種別、地理的条件等から判断して当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならないと認められる場合には、保有を認めて差支えない。
つまり、仕事の種類や地理的条件によっては自動車の使用を認める余地があるということです。事業の種別と地理的条件について、具体的に説明しましょう。
仕事用として自動車の保有が認められる2つの条件とは
自家用車によるルート営業の仕事をすることについては、次の2つの観点から検討することが妥当でしょう。
1.将来の保護脱却のために最善の策か
本人は、自家用車を使ってルート営業をすることで、将来的には生活保護が必要ない程度の暮らしができるようになりますか?具体的には、収入から必要経費を差し引いたお金で最低限度以上の暮らしができるようになるでしょうか?
これが社用車を使ったルート営業であれば、何ら問題はありません。収入は全て生活費に充てることができますから。ところが、自家用車を使う場合、自動車の維持にかかる経費を誰が負担するのか、という問題があります。
車の維持費は想像以上にかかります。ルート営業として自家用車を使った場合、会社が負担するのはせいぜいガソリン代と有料道路代程度でしょう。その他の費用、具体的には駐車場代、車検代、諸整備費用、自賠責保険料、任意保険料、消耗品代等々。
自動車の維持費用が本人負担とすると、その分生活費を圧迫してしまい、いつまで経っても生活保護から脱却できないということになりかねません。
それならば、最初から自家用車を使わない仕事を探した方がマシじゃないですか、ということになるのです。
2.その地方の低所得者とバランスを欠いていないか
その地方の生活保護を受けていない低所得者とのバランスも考慮する必要があります。
具体的には、バスなどの公共交通機関がほとんどない地域であって、所得が低い人でも車を持っているのが珍しくないと言えるか、ということです。
まとめ
生活保護受給者がルート営業のために自家用車の保有を認められるためには、次の2つの条件を満たす必要があるでしょう。
- 自家用車の維持費が自己負担になったとしても、将来的にはルート営業の仕事で生活保護から脱却できるだけの収入が見込まれる。
- その地方では、低所得でも自動車を持っていることが珍しくない。
現場を見ていると、自動車を保有するよりも、むしろ手放すことが家計の改善につながり、ひいては早期の保護脱却につながっていると感じます。
自動車というのは想像以上に維持費がかかるものです。お金がない生活保護受給者の場合はなおさらです。私ならば、 自動車がないと生活が立ち行かないような田舎でない限り、自家用車を使わなくてもできる仕事を探すことを強くお薦めします。
なお、冒頭のAさんの質問のうち、通勤用として自動車の保有を認められる条件については、こちらの記事で解説しています。
10年ワーカー
自動車は、使わずに停めておくだけでもお金がかかるもの。自動車を日常の足として使うことが認められない生活保護受給者にとっては、保有のメリットよりもむしろデメリットの方が大きいと感じます。