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生活保護受給者は自由に引越していいの?
10年ワーカー
生活保護受給者の転居については、2つの論点に分けて考えましょう。
Q1:そもそも、生活保護受給者は自由に転居できるでしょうか。
Q2:もし自由に転居できたとして、その費用は生活保護から出せるのでしょうか。
この記事では、Q1について説明します。Q2については、こちらの記事をご覧ください。
Q1:生活保護受給者は自由に転居できるのか?
転居の自由は、憲法第22条で「居住移転の自由」として保障されている人権です。したがって、生活保護受給者であっても転居は自由です。
時折、Q2.で説明予定の転居費用の話と混同して、生活保護受給者は役所の許可がないと転居できない、と考えている人もいますが、それは誤りです。
つまり、生活保護の受給要件を満たしている限り、日本中どこに住んでいても生活保護を受給することができるのです。預貯金や他の人からの援助で転居関連費用さえ賄うことができれば、日本中どこで暮らしてもいいわけです。
生活保護上の転居手続きの進め方
転居の際は、住民票の異動など様々な手続きが必要ですが、ここでは、生活保護上の手続きに絞り、事例を使って説明します。
事 例
A市で生活保護受給中の鈴木さんが、11月1日にB市へ転居。転居費用(荷物運送代、敷金、不動産仲介料)は知人がすべて援助してくれる場合。
この場合、次の手順で進めましょう。
1.転居前にB市内の借家を確保する。
B市内に、家賃がB市の生活保護基準内の借家を借りておきます。生活保護を申請するためには、その自治体で暮らしている必要があるので、B市へ来たらすぐに入居できるように事前の準備が必要です。
2.B市へ転居する旨の保護変更申請書をA市へ提出する。
遅くとも転居の2週間前までには、担当ケースワーカーへ転出することを伝え、保護変更申請書を提出しましょう。保護廃止の事務処理にもそれなりの時間がかかります。
3.A市から保護廃止決定通知書を受け取る。
A市から転出することで、A市での生活保護は廃止になります。11月1日付でA市での生活保護を廃止することを証明する書類として、「保護廃止決定通知書」を受け取ります。
なお、11月1日付で生活保護廃止の場合、生活保護の適用があるのはその前日、つまり10月31日までとなります。
4.11月1日にB市へ移動し、借家へ入る。
11月1日にB市へ行き、新たな家に住み始めます。前述のとおり、生活保護を申請するためにはその自治体で暮らしている必要がありますので、保護申請前に入居しておくことが必要です。
5.11月1日中にB市の生活保護担当課へ行き、生活保護を申請する。
11月1日にB市の生活保護担当課へ行き、生活保護の申請をします。A市での生活保護受給期間とB市での生活保護受給期間との間に空白が生じないように、11月1日に必ず保護申請をしましょう。11月1日が土日に重なる場合は、事前にB市の生活保護担当課へ尋ねましょう。
生活保護受給期間に一日でも空白があると、その日のためだけに国民健康保険などに加入する必要があり、事務手続きが煩雑になるうえ、保険料の負担まで生じてしまいます。他にも、国民年金保険料の法定免除申請などに余計な手間がかかることが予想されます。また、当然ですが、空白期間分の生活保護費はもらえません。
6.B市での生活保護が決定。
A市での生活保護はB市へは引き継がれません。B市で一から調査をやり直しますので、決定までは2週間から最長1カ月かかります。生活保護が決定すれば、申請した11月1日遡って生活保護費が支給されますが、それまでの間は手持ちの金で一旦立て替えておく必要があります。
まとめ
- 生活保護受給者であっても、転居は自由。ただし、転居費用を生活保護で出してもらえるかは別問題。
- 転居前に転出先の家を確保しておく。家賃は転居先の基準額の範囲で。
- 転居元と転居先での生活保護受給期間に空白が生じないように。
- 転居先で生活保護を申請して決定するまでの間は、生活費などを立て替えておく必要がある。
Q2.生活保護受給者の転居費用は役所から支給されるのか?
こちらの記事で解説していますので、ご覧ください。