平成28年9月22日付河北新報オンライン
<生活保護不正>職員の棚から現金21万円
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平成28年9月22日の河北新報オンラインの記事です。生活保護担当課の職員が他の課へ異動後、残した書類の中から現金21万円が見つかりました。
市によると、現金は女性職員が今春に異動後、未処理の書類を整理した際に発見された。同区の須藤洋保護課長は「帳簿などを全て点検し、公金の可能性はなく、保護世帯から預かったものでもないことが分かった」と述べた。
公金の可能性はないとのことで、最後の一線は踏み越えていなかったみたいです。ここを踏み越えると懲戒免職の可能性大でしょう。
女性職員は2011~15年度、計約86万円の未払いと計約256万円の過払いを生じさせたほか、葬祭費用が出せない場合に扶助される受給者2人分の葬祭代など計約21万円が業者に未払いだった。さらに約620万円を過払いした可能性があるとして、市が調べている。
それにしても杜撰な職員ですね。これが事実だとしても、自分の金を21万円も以前の職場に置きっ放しにするとか、どういう感覚の持ち主なのでしょう。私にも理解できません。
ケースワーカーは仕事していないの?
私を含め多くのケースワーカーの名誉のために申し上げますが、95%ぐらいのケースワーカーは、「しっかりと」、少なくとも「それなりに」仕事しています。
しかし、役所も社会の縮図です。一部のケースワーカーは与えられた仕事を片づけることができず、仕事が溜まっているのも事実です。これは組織として対処すべきことなのですが、完全には機能していません。
特に、今回のように大きな問題になるのは、本人が仕事の未処理を周囲に隠しており、発見が遅れるケースがほとんどです。本人にSOSを出す勇気があれば、ここまで問題が大きくなることはありません。
本人がSOSを出しやすい職場環境を醸成することも必要なのですが、どの職場でも行政改革の名のもとに職員数の削減が行なわれており、一人一人の職員には多くの業務が割り振られ、みんなに心の余裕がないのも事実です。
620万円の過払い金、どうなる?
「さらに620万円を過払いした可能性」ですか。事実だとすれば、返還への道のりは厳しいですね。。。
ちなみに過払いとは、役所が保護受給者に対して払い過ぎた金のことです。つまり、今後、役所が保護受給者から返してもらう金です。(生活保護法第63条に基づく返還金)
そもそも、生活保護受給者は生活に困っているから生活保護を受けているわけで、そんな人たちから金を返してもらうのは大変です。返還額にもよりますが、通常は分割払いということになります。
ただし、相手が生活保護受給者の場合、一般的な借金とは異なり、役所が生活保護費を支給しますから、支給と同時にその一部を返還してもらうという方法を取るのが通常です。なお、生活保護費から事前に返還金を天引きすることは、違法の可能性があるため通常は行いません。
こうして、保護受給者に対して、生活に支障がない範囲での返還を求めます。通常、一人世帯の場合で月に5千円程度を返還させることが多いです。
今回の報道の件がもし単身世帯ですと、620万÷5,000円=1,240月≒103年。返還まで100年以上かかることになります。これは極端なケースだと思いますが、完済まで20年かかるというケースは、私も見たことがあります。10年かかるケースは普通にあります。
たとえ返還金の総額が大きくても、生活保護を受けている間はほぼ確実に返済させることができます。しかし、生活保護が廃止になってしまうと、自主的に納付してもらうことになるため、返還が滞ることが多いです。
なお、返還金を完済する前にその生活保護受給者が死亡した場合、その債務は相続人が継承することになります。
まとめ
- 能力的に問題のあるケースワーカーが一部いるのは事実だが、それはどの職場も同じ。本来、それをカバーするために組織があるが、人員削減などでうまく機能していないのが現実。
- 過払い金とは、今後保護受給者から役所に返してもらうべき金のこと。通常分割払いとなり、金額次第では返還に長期間かかる場合も多い。
10年ワーカー
ここまでひどい仕事ぶりでも懲戒免職にはならないのが、公務員。積極的に悪事を働かない限り、仕事を怠けただけではクビになりません。
そろそろこの運用も変える時期かもしれません。こんな職員がそのまま残っていたら、現場の士気は下がるでしょうね。