「障害がある人って、健常者よりも生活保護申請が通りやすいの?」
「障害がある人が生活保護を受けていると、どういうメリットがあるの?」
障害があると、生活保護を受けやすそう。何となくそんな感じがしますよね。
では、本当にそうなのでしょうか。
生活保護を申請する時、生活保護が決定した後、障害者は何が違うのでしょうか。
生活保護を申請する時、障害者が有利なこととは?
生活保護の必要性を判断する時は、その世帯の最低生活費と収入額を比較します。
最低生活費※ < 収入
→生活保護を受けられない
最低生活費※ > 収入
→生活保護を受けられる
(※単純化するために、医療費や介護費は省略します。)
最低生活費とは、住んでいる市町村、家族の人数、家族それぞれの年齢、障害の有無、家賃等によって、その世帯が最低限の生活を送るのに必要な理論上の費用です。
収入は、その世帯員全員の収入総額から必要経費を差し引いた額です。
身体障害者手帳1・2・3級、または精神障害者保健福祉手帳1・2級を持っていると障害者加算が付きますので、最低生活費が増額されます。
では、具体例で見ていきましょう。
東京都区部に住む68歳の一人世帯の場合(平成29年度基準)
例1:健常者で、収入は老齢厚生年金月額15万円
最低生活費 月額133,490円(住宅費を含む、医療費は除く)
収入 老齢厚生年金月額150,000円
最低生活費133,490円 < 収入150,000円
→生活保護を受けられない
例2:身体障害者手帳1級を所持し、収入は老齢厚生年金月額15万円
最低生活費 月額159,800円(障害者加算・住宅費を含む、医療費は除く)
収入 老齢厚生年金月額150,000円
最低生活費159,800円 > 収入150,000円
→生活保護を受けられる
このように障害者加算がつくと最低生活費が上がります。このため、収入が同じでも、障害者だけが生活保護を受けられるという場合があります。
つまり、身体障害者手帳3級以上、精神障害者保健福祉手帳2級以上を所持している場合、そうでない人よりも生活保護の申請は通りやすくなると言えます。
生活保護が開始になった後、障害者が有利なこととは?
1.収入
上で説明したとおり、身体障害者手帳3級以上、精神障害者保健福祉手帳2級以上を所持している場合は、障害者加算が増額されますので、その分支給額が増えます。加算額は次のとおりです。
障害者加算
身体障害者手帳1・2級、精神障害者保健福祉手帳1級
26,310円(平成29年度、東京都区部)
身体障害者手帳3級、精神障害者保健福祉手帳2級
17,530円(平成29年度、東京都区部)
(身体障害者手帳4級以下、精神障害者保健福祉手帳3級には障害者加算はありません。)
2.支出
生活保護受給者の場合、身体障害者手帳または精神障害者保健福祉手帳を持っていれば、ヘルパーなど様々な障害福祉サービスを自己負担なしに受けることができます。
身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳の新規・更新申請の時には医師の診断書が必要です。
生活保護受給者の場合、文書料の一定の額を別途支給できますので、診断書料の自己負担が少なくて済みます。
障害年金は、定期的に現況の届け出が必要な場合があり、その際は診断書が必要です。その診断書料は1万円を超えることも多いです。
生活保護受給者の場合、診断書料を必要経費としてみますので、結果として障害年金の診断書料の自己負担はありません。
3.資産
原則として、生活保護を開始すると自動車は保有できません。
しかし、障害者の場合は、一定の要件を満たしていれば、保護開始後も通院用として自動車を保有できる場合があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
一定以上の障害者の場合は、保護申請時と保護受給中のいずれも健常者より有利に取り扱われます。
したがって、本人はそこまで生活に困窮しているという意識がなくても、実は生活保護を受けられるという場合もありますので、目立った資産がない障害者の方は、今の状況で生活保護が受けられるかどうかを役所で一度相談してみてはいかがですか?
すぐに生活保護を申請するかは別として、いつでも生活保護を受けられると知っていれば、安心感が違うのではないでしょうか。