※この記事にピッタリの猫画像は見つかりませんでした。
ケースワーカーは担当する世帯を定期的に訪問します。それ以外にも、新たに生活保護の申請があれば、自宅を訪問して調査を行います。
そこで、これまで訪問した中から印象に残っているケースを紹介します。今回はいわゆる「猫屋敷」です。
今回保護申請があったAさん。申請を受理すると、調査担当者がAさんの生活状況の確認と、聞き取り調査を行うために自宅を訪問します。
Aさんは公営住宅に住んでいます。公営住宅では通常ペットの飼育はできません。ですが、猫を飼っている人は結構多いんです。猫は鳴き声がほとんどしませんし、散歩に連れて行かなくても大丈夫ですから。
Aさん宅、玄関に近づくとすでに動物臭が漂っています。
しまった。こういう時の必需品、「替え靴下」を忘れてしまいました。大失敗です。
実は、事前にAさんから、猫を飼っているとは聞いていました。経験上、わざわざ猫を飼っていると事前に言う場合、通常の「飼っている」とは状況が異なります。
玄関扉を開けてもらうと、、、、猫がいるはいるは。10匹ぐらい。障子紙はほぼ全てが破れて枠しか残っていません。柱は傷だらけ、というよりも全体が爪の研ぎ跡に覆われています。そして強烈な動物臭。
しかし、調査はこれからです。気を取り直してAさんに尋ねます。
「・・・どこで話をしましょうか?」
机はこたつ机が一つあるきりなので、そこしかないのですが、座る場所がありません。床には雑誌や食べ物の空き袋などが散乱というよりも敷き詰めてあり、間から見え隠れする畳も茶色に変色しています。
「すみません、猫のせいで汚れてて・・・」Aさんも一応気遣ってくれてるみたいです。猫のせいだけじゃないでしょう、と言いたい所ですが、もちろん言えません。
「こちらへどうぞ」と言ってAさんが差し出したのは、茶色のバスタオル。この上に座ってください、という意味です。このバスタオル、元は白っぽいものだったと思うのですが、どうすればここまで変色するのでしょう。
調査には通常1時間近くかかりますし、Aさんが畳に座っているのに自分だけ立っているわけにもいかず、覚悟を決めて座ります。このスラックスもクリーニングに出さないとなぁ。
調査が始まります。Aさんに書いてもらう書類があるのですが、机の上も何かベトベトしています。落ち着きません。
最初は遠巻きに見ていた猫も時間が経つにつれて、だんだん近寄ってきます。私も猫が嫌いと言うわけではないのですが、この環境で暮らしている猫にすり寄られると、何か病気を移されそうで落ち着きません。でも、下手に避けて爪で引っ掻かれでもしたら最悪ですから、猫のするがままに任せておきます。
思わず、「ネコ、かわいいですね~」と心にもないことを言ってしまう自分が少しイヤになります。
人間の鼻は便利なもので、どんなに臭いにおいでも、時間が経つと慣れてしまいます。
1時間後、ようやく調査が終わりました。玄関でAさんに気付かれないように靴下を脱ぎました。裸足で革靴を履いて、今回の調査は終了です。お疲れ様でした!