別世帯の親・兄弟姉妹・子どもが年収1000万円ある場合でも、生活保護は受けられるでしょうか。
結論から言うと、生活保護は受けられます。親族が高収入であることは、生活保護の決定には影響しません。くわしく解説しましょう。
親族の年収や資産は生活保護の条件ではない
生活保護開始の条件について、生活保護法はどう定めているのでしょうか?
生活保護法では、①収入が生活保護の基準以下であること、②現金・預金、他にもお金に換えられる資産(生命保険、車、不動産など)があればそれをまず生活費にあてること、③働ける人は働く努力をすること、を条件としています。
一方、親族の年収や資産額は生活保護の条件ではありません。親族から本人へ仕送りがあった場合にその分だけ生活保護費を減額するというのが、生活保護法の争いのない解釈なのです。つまり、高収入や資産家の親族が仕送りしなくても、それを理由に生活保護を受けられないとはならないのです。
ちなみに、生活保護開始のためには、次の2つの条件をどちらも満たすことが必要です。
1.定期的な収入額が生活保護の基準以下
年金や仕事の収入、児童手当や児童扶養手当などの手当、それ以外の収入も含めた定期的な収入の合計額がその世帯の生活保護基準額より低いこと。
これが生活保護決定の一つめの条件です。
たとえば、ひと月の年金額は生活保護基準を超えているけれども、今月入った年金を使ってしまった。このため次の年金が入るまで生活保護を受けたい、ということはできません。
2.現金、預金、国債や株式売却でも、1ヶ月も暮らせない
銀行預金は簡単に引き出せますし、有価証券(国債や株式)の売却も簡単です。このため、手持ちの現金、預金、有価証券により、生活保護レベルの生活が1ヶ月以上できる場合は、生活保護申請は却下されます。
現金、預金、有価証券を生活費や住宅費などにある程度使ってしまってから、もう一度生活保護の申請に来てください、ということになります。
拒む親族に仕送りをお願いするのは、かなり難しい
話を戻しましょう。
たとえば、別世帯の父親が年収1000万円でも生活保護は受けられるのでしょうか。
結論から言えば、受けられます。
私が実際に担当していたケースでも、父親が開業医で高年収が明らかでありながら生活保護を受給しているケースがありました。
このようなケースにみなさんが違和感を持つのは分かります。ただ、このあたりは生活保護法でも一定の考慮はなされています。
このようなケースの場合、福祉事務所から家庭裁判所に対し、父親の扶養義務履行の申し立てを行います。
その上で、家庭裁判所が父親に対して仕送りを行うように命令したとしましょう。その場合、これまでに福祉事務所から本人へ払った生活保護費について、父親が福祉事務所へ返還するよう、父親に対して求めることができるのです。(生活保護法第77条)
つまり、本人は間に入らず、福祉事務所と父親の間でやり取りがなされます。
もし親族が仕送りをしてくれる場合は、断われない
では、父親が仕送りをすることに同意したとして、本人は仕送りを断ることはできるのでしょうか。親子関係が悪化している場合など実際にあり得るケースです。
この場合、本人は仕送りを拒否することはできません。
仕送りがあればその分だけ生活保護費は減額されます。もし生活保護の基準以上の仕送りが行われれば、生活保護は廃止となります。
まとめ
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親族が高年収や資産家でも、仕送りを拒否すれば生活保護開始には影響しない。
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ただし、親族が仕送りを申し出た場合、本人は拒否できない。拒否すると生活保護を受けられない場合がある。
根拠法令等
生活保護法第4条・第77条
生活保護と私的扶養(生活保護手帳別冊問答集 第5)