生活保護受給中のOさん
生活保護を受けながら、働いています。今の仕事は長年経験があるのですが、若い頃とは違い、足腰の痛みのため長続きしません。
10年ワーカー
長年一つの業界で働いてきたけれど、体調を崩してしまいその業界で働くのが難しくなったというケース、決して珍しくはありません。私が担当したケースでは、土木作業員やタクシー運転手などで同じような事例がありました。歳をとれば昔と同じようにはいきませんよね。
生活保護受給中のOさん
腰や膝に痛みがあり、整形外科の先生からは無理をしないように言われています。生活保護の就労支援員さんにもそのことを伝えているのですが、分かってもらえず、早く就職するように言われるばかりでした。
これ以上足腰の痛みがひどくなれば、いずれ今の仕事も辞めることになります。こんなことの繰り返しではいつまでたっても生活保護から脱却できません。どう対処すればいいのでしょうか。
10年ワーカー
体調に問題を抱えての求職活動。Oさんのような立場になった時、どういう選択肢があるのでしょう。詳しく説明しましょう。
誰でも歳を取ります。昔はできたことができなくなります。だからといって、「じゃあ、仕事しなくていいですよ。」とはならないのが生活保護です。
働くことは生活保護受給の条件だが、例外もある
生活保護受給者は、その人の能力に応じて働くことが生活保護受給の条件の一つとされています。(生活保護法第4条第1項)
生活保護法第4条1 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。2・3略
しかし、就労指導の対象にならない人もいます。65歳以上の高齢者、15歳以下の児童、症状が重い障害者、このほかに病気やケガのため治療に専念すべき人。これらの人達は就労指導の対象外となります。
では、病気やケガのため治療に専念すべきかどうかは誰が判断するのでしょうか。形式的には福祉事務所長が判断することになっていますが、実質的には主治医の判断が重要視されます。やはりその人の病状を一番知っているのは主治医ですから。
そこでOさんの質問に戻ります。膝や腰の痛みのため仕事を続けるのが難しいOさん。どう対処すればいいのでしょう。
働けるかどうかの判断の鍵は主治医
Oさんの場合は腰や膝の痛みが原因で仕事が満足にできないとの訴えですから、整形外科の主治医の判断が鍵になります。
まずはOさんから主治医へ次のように尋ねてみましょう。
- 今の身体の状況でその仕事を続けることで、病状が悪化することはないのか?他の仕事を探すべきなのか?
- 他の仕事を探すとすれば、制限を受ける職種は何なのか?(例:立ち仕事はダメ、運転はダメ、足腰に大きな負担がかかる仕事はダメ等)
もし主治医から、今のOさんの仕事では病状が悪化するので、他の仕事を探した方がよい、または、働かずに治療に専念した方がよい、などの言葉が出ればしめたもの。そのことを担当ケースワーカーに伝えましょう。すると担当ケースワーカーが主治医を訪問し、事実確認を行います。
主治医の所見が、Oさんの確認した通りであれば、福祉事務所としても仕事を続けるように指導することは通常ありません。Oさんが仕事を辞めてもケースワーカーや就労支援員から咎められることはないでしょう。
医者でも全ては分からない
働けるかどうかの判断については、医師によって判断が異なることがあります。かつて、私が担当する保護受給者の病状について、整形外科の先生に尋ねてみたことがあります。
先生は「本当にこの痛みが原因で今の仕事ができないかどうかなんて、本人しか分かりませんよ」とのことでした。まあ、その通りかもしれませんね。本当の痛みは本人しか分かりませんから。
逆に言うと、自分が働けないことを主治医に理解してもらうためには、患者自ら患部の痛みをしっかりと主治医へ説明し、主治医へ理解してもらう必要があります。
このためにも、主治医の指示通りに通院や服薬を行ない、主治医との信頼関係を築いておくことが大切です。どうしても主治医と折り合いが悪い場合には、他の病院へ移ることも一案です。
まとめ
福祉事務所からは就労指導を受けているが、保護受給者自身は体調的に仕事は無理と考えている場合、次の手順で進めましょう。
- 仕事に支障のある部位の治療を真面目に行う。
- 患部の痛みを主治医へしっかりと説明する。
- 担当ケースワーカー(または就労支援員)に働けない理由をしっかり説明する。
- 担当ケースワーカーから主治医に対して病状を直接確認してもらう。
10年ワーカー
保護受給者本人は仕事は無理と言い、一方、主治医は働けると判断し、ケースワーカーが板挟みになる時があります。
このようなケースでは、保護受給者が通院や服薬について主治医の指示を守らずに、主治医と患者の信頼関係が築かれていないことが多いと感じます。
病気やけがを理由に仕事ができないと訴えるのであれば、治療を真面目に行うことは絶対条件です。