生活保護受給者が大学や専門学校へ進学するための3つのポイント

生活保護受給中のAさん
私の家は、私Aと高校生Bの二人暮らしです。Bは来春高校を卒業し、大学への進学を考えているのですが、生活保護はどうなるのでしょうか。
 
10年ワーカー
Bさんは大学進学を希望されているのですね。AさんとBさんが一緒に暮らしていても、「世帯分離」という方法でAさんだけ引き続き生活保護を受けられる場合がありますよ。
生活保護受給中のAさん
一緒に暮らしても、私だけ生活保護を受けて、大学に通うBは生活保護を受けられないのですか。Bはどうやって生活費や学費を工面すればいいのでしょうか。また、どんな手続きが必要なのですか?
10年ワーカー
生活保護世帯の高校卒業者が大学や専門学校へ通う際のポイントはこの3つです。

1.役所から世帯分離を認めてもらう。
2.奨学金を借り入れる。
3.高校在学中にアルバイトで入学費用を貯めておく。
 
では詳しく説明しましょう。

 

役所から世帯分離を認めてもらう

大学生(夜間を除く)には生活保護が適用されない

高校卒業者の生活保護上の取り扱いは次のとおりです。
  • 高校卒業者は高校で得た技能や知識を活用して働いて収入を得るのが原則。
  • 夜間大学は、仕事をした上で余暇時間に通うのであれば、生活保護を継続できる。
  • 大学(夜間を除く)に通う場合、働く能力を十分活用できないので、生活保護は適用されない。
生活保護では、働ける人は能力に応じて働くことが原則ですから、大学での勉学のため十分に働けないBさんには、生活保護は適用されません。
 
そこで、世帯分離により、母親Aさんだけに生活保護を適用します。AさんとBさんは同じ家で暮らし、生計も同じなので、生活保護上は二人世帯なのですが、これをAさんの一人世帯とみなすのです。
 
担当ケースワーカーへ、「娘Bが4月から昼間の大学へ進学予定なので、Bを世帯分離してほしいのですが」と相談してみましょう。
 

奨学金を借り入れる

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世帯分離になると、大学生Bさんは生活保護を受けられません。Bさんは必要なお金は自分で稼ぐか借りることになります。Bさんはアルバイトで生活費を稼ぎながら、学費は奨学金で賄うことになります。
 
生活保護法では、世帯分離して大学進学を認める際に、奨学金の貸与を受けることを条件としています。
 
しかし、現実にはアルバイトと奨学金だけでは学費を賄えないことも多く、生活費をかなり切り詰めている人が多いのが実情です。
 
これではたとえ大学に進学できたとしても、アルバイトに追われ勉強の時間を確保することが難しいのではないでしょうか。
 
なお、奨学金の借入先は、通学中の高校と進学先の大学へ問い合わせるのが近道です。
 

高校在学中にアルバイトで入学費用を貯めておく

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 このように生活保護世帯から大学へ進学するのは、金銭面でかなり厳しいのです。そこで、Bさんが高校生の時にアルバイトをすることで、大学の入学料を有利に貯められる制度があるので、活用したいところです。具体例で説明しましょう。

具体例

高校生Bさんがアルバイトで月収6万円を得た場合
月収       60,000円
基礎控除   △ 19,600円
未成年者控除 △ 11,400円

差引       29,000円
 
本来、差引29, 000円は収入認定対象なので、その分生活保護費が減額されます。ところが、この29, 000円を減額されることなく、大学入学費用として貯めることができます。
 
事前に役所の承認が必要ですし、条件もありますので、必ずアルバイトを始める前に担当ケースワーカーへ相談してください。
 
アルバイトを禁止している高校もありますが、それで諦めるのではなく、アルバイトが必要な事情を先生へ説明し、認めてもらうのが得策でしょう。ぜひ、このサイトを先生へ見せて、あなたの進学への熱意を先生方へ伝えてください。
 
実際、私が数年前に担当していたケースですが、高校生から専門学校を卒業するまで喫茶店でアルバイトをしながら、幼稚園教諭の免許を取り、現在、幼稚園の先生として働いている方がいます。
 
その母親は今でも生活保護を受けていますが、確実に一人が生活保護から脱却できたわけです。良くも悪しくも学歴社会の日本において、使える免許資格を取得するのは、生活保護から脱却するための有効な手段です。
 

これから生活保護制度は変わっていく?

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サイト管理人10年ワーカーの考え

このように、生活保護世帯から大学へ進学するには金銭面でとても厳しいのが実情です。
 
学費は生活保護から支給できないにしても、せめて生活費を受給しながら大学へ行けるようになれば、生活費を稼がなくていい分、金銭面の負担は軽減されます。そうすれば奨学金の借入額も減らせるので、奨学金の返済で将来苦労することも減るでしょう。
 
高卒者と比べると大卒者は平均年収も高いですから、生活保護世帯から大卒者を出すことで、生活保護受給者の子どもが再び生活保護を受ける、いわゆる「貧困の連鎖」を防ぐこともできます。
 
問題は、生活保護を受けていない低所得世帯とのバランスです。
 
生活保護は最低限度の生活を保障する制度ですから、もちろん最低限度を下回ってはいけません。一方で、最低限度を超えてもいけません。
 
最低限度を超えない範囲がどこまでなのか。ギリギリ生活保護に至らない低所得世帯とのバランスをいかにとるのか。
 
生活保護基準を少し上回る低所得者に対して、大学進学費用を給付するような制度を設けるのが先であり、その次に生活保護制度を見直すのが順序だと私は考えます。
 
世の議論が待たれます。
 

まとめ

生活保護世帯の高校卒業者が大学や専門学校へ通う場合の3つのポイント
  1. 役所から世帯分離を認めてもらう。
  2. 奨学金を借り入れる。
  3. 高校在学中にアルバイトで入学費用を貯めておく。
 
10年ワーカー
生活保護を受けながらも大学進学を目指すというその熱意。ケースワーカーとしても大事にしたいです。ですが、現実は厳しい。ケースワーカーとして何ができるのでしょうか。