借金を返済しながら、大学生の子どもと同居できる?生活保護受給者の借金と転居について。

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10年ワーカー
読者のKさんから質問をいただきました。少し長くなりますが、紹介します。
 
Kと申します。病気で働けないため生活保護を受給しています。子供は、某企業の給付型奨学金を受け、県外の国立大学医学部に在学中です。
 
本来、子供の生活費と授業料は奨学金で賄えるはずなのですが、高校までの教育費や子どもの引越し費用、さらに受験費用等を工面するため、カードローンで160万円ほど借金しました。もっと金利が低い借入先を探しましたが、生活保護受給者のため借りられるところが見つかりませんでした。
 
その借金の支払いが生活を圧迫しています。毎月、元金35,000円と金利20,000円で合計55,000円の返済があり、生活保護費と子どもの奨学金から支払っています。子どもも私も食費や光熱費などをぎりぎりまで削っていますが、子どもは一人暮らしで毎月生活費が足りません。このため、私が更に借金をして追加の仕送りをしたり、子どもがアルバイトを増やしたりで何とか暮らしています。
 
借金は全く減らず、子どもは勉強がかなり忙しく、アルバイトが負担になっています。もしも成績不良となれば、奨学金は打ち切られます。
 
このため、私が引越して子どもと同居したいのですが、可能でしょうか。もし可能な場合、引越し費用は自己負担となるのでしょうか。
 
引越先は公営住宅を考えていますが、住民票を移動する前に申し込みができるのでしょうか。
 
10年ワーカー
まずは、生活保護を受けながら、お子さんが国立大学医学部へ合格したことについて、拍手を送ります。本人の努力はもちろんですが、母親の支えがあればこそです。おめでとうございます。
 
しかし、お子さんは国立大学医学部に入学したとはいえ、様々な問題を抱えていらっしゃるようですね。いくつかの問題点がありますので、一つずつ検討していきましょう。
 

まず借金問題を解決しましょう

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10年ワーカー
まず借金問題を解決しましょう。Kさんの場合、借金問題を解決することが全体の問題解決のカギになります。現実的に月々返済できる額にまで返済額を減らす方法を検討しましょう。
 
Kさんの毎月の返済は元金35,000円+金利20,000円とのことですから、金利は15%程度でしょうか。あとどれぐらい借金が残っているのか分かりませんが、単身の生活保護世帯で月55,000円を借金返済に充てるのは不可能です。Kさんがお子さんの奨学金に手を付けるのも無理ありません。
 
しかし、これでは将来の展望が描けません。Kさんは病気で働けませんし、お子さんはすでにアルバイトで学業に支障が出そうな状況です。これ以上収入を増やす方法は思い当たりません。
 
解決方法ですが、まずは市や県の消費者センターへ相談してみましょう。相談は無料です。もし解決できる見込みがあれば、法テラスなどを紹介してくれます。どのような法的整理が望ましいかはケースによりますが、弁護士費用と合せて月1万円程度の返済に話を持っていくことができればベストです。
 
法テラスで法的整理を行った場合、費用は法テラスが一旦立て替えます。生活保護受給者の場合、法テラスが立て替えた弁護士費用の返還が免除される場合があります。つまり弁護士費用を払わずに借金の整理ができるので、ぜひ活用しましょう。弁護士費用の免除については、こちらをご覧ください。
 

子どもと同居するのが本当にベスト?

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生活保護受給中のKさん
生活保護費内での借金返済に目途が立ったとして、県外で子どもと同居しながら生活保護を受けることはできるのでしょうか。
 
10年ワーカー
子どもと一緒に住んだ場合の生活保護の取扱い、そして同居のメリットとデメリットについて説明しましょう。
 
Kさんが引っ越して、大学の近くでお子さんと同居生活を始めた場合、Kさんとお子さんは転居先の自治体で改めて生活保護の申請を行うことになるでしょう。すでに大学入学時に生活保護が廃止になっているお子さんは、今回「保護開始時において現に大学で就学している者」に該当するでしょうから、世帯分離が可能と思われます。つまり、Kさんとお子さんが同居しながら、Kさんだけ生活保護を受けることになります。
 
厚生労働省社会・援護局長通知第1-5
次のいずれかに該当する場合は、世帯分離して差しつかえないこと。
(1)保護開始時において、現に大学で就学している者が、その課程を修了するまでの間であって、その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合
(2)以下省略
 
同居のメリットは、Kさんが家事を行なうことで、お子さんが勉強に専念できることでしょう。生活費についても、一人暮らしの時より、やり繰りに余裕があるかもしれません。
 
もし借金返済が月1万円程度であれば、Kさんの生活保護費から返済し、お子さんは生活費と学費を奨学金で賄い、何とか収入の範囲内で生活できそうです。
 
同居のデメリット。それは、同居を始めるまでの費用負担です。今の住まいの退去時のクリーニング費用、荷物の運搬費用、転居先で家を借りる費用、転居先で間取りに合わせて購入する照明器具、ガスコンロ、カーテン等々。転居による費用は決して少ない額ではありません。
 
なお、生活保護には、転居先で家を借りる際の敷金等や運送費が支給される制度もありますが、Kさんの場合はいずれの条件にも該当しないようです。(転居費用が支給される17の場面については、こちらの記事で説明してますので、ご覧ください。)
 
医学部で勉学をがんばっているお子さんを助けたい、力になりたいというKさんのお気持ちは、私も子を持つ親としてよく分かります。しかし、今の状況ではKさんの転居費用を無償で援助してくれる親戚等はいないと思われますので、金銭面でのリスクが高いです。
 

10年ワーカーの提案

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10年ワーカー
  そこで、私がお薦めする方法は次のとおりです。
 
Kさんは負債の整理を行った上で、今の生活を続けます。その間に少しずつ転居費用を貯めてから転居すること。これが現実的な方法だと私は考えます。
 
今、Kさんが絶対にしてはならないことは、借金の額を増やしてしまうことです。転居費用を借金で賄うことは絶対に避けるべきです。もし転居費用を貯めることが出来なくても、借金の返済が月1万円程度にまで減らせれば、Kさんとお子さんは同居することなく、それぞれが収入の範囲内で生活できるはずです。
 

公営住宅の入居について

質問をいただいた公営住宅への入居についても触れておきます。
 
入居条件については、その公営住宅の所有者(管理者)ごとに異なりますので、ここで具体的にお答えすることはできません。
 
一般的には、その公営住宅を所有する自治体(県営住宅ならば、その県内)に住んでいることが入居条件となります。具体的には、転居先の公営住宅管理者へ直接問い合わせてください。
 

ケースワーカーへ相談しましょう

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今回の件は様々な事情が絡みあっています。Kさんからお聞きした情報を前提として回答しましたが、質問には出てこない情報もあるでしょう。
 
Kさんは生活保護を受けているのですから、担当のケースワーカーへ相談するのが一番です。
 
今回いただいた質問の内容であれば、Kさんがケースワーカーへ相談しても、不利益になるようなことはないでしょう。行政の中でKさんの生活状況を一番把握しているのは担当ケースワーカーです。ぜひ頼ってください。
 

まとめ

10年ワーカーの結論を整理すると、次のとおりです。
  1. 消費者センターなどへ相談し、借金の整理に道筋を付ける。
  2. 新たな借金は絶対にしない。現時点での転居はお薦めしない。
  3. 担当ケースワーカーへ相談する。
10年ワーカー
将来、Kさんとお子さんの生活が改善し、数年後にお子さんが医師として世に出ることを強く願っています。そのことに私の知識と経験が少しでもお役にたてれば、これ以上の喜びはありません。