生活保護受給者が確定申告をするメリットは?住民税と所得税の生活保護上の取扱いとは。

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生活保護受給中のSさん
生活保護を受けながらアルバイトをしているのですが、市民税の納税通知書が届きました。

生活保護受給者には税金がかからないと思っていたのですが、なぜ通知が来るのでしょうか。この市民税は支払わないといけないのですか?

10年ワーカー
生活保護受給者の収入には税金がかからないと思っている人が多いようですが、正確ではありません。生活保護受給者と税金の関係について説明しましょう。

生活保護受給者が課税されないのは、生活保護費だけ

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税金が課されないのは、福祉事務所から支給される「生活保護費」(保護金品)だけです。
 
生活保護法第57条(公課禁止)
被保護者は、保護金品を標準として租税その他の公課を課されることがない。
 
生活保護受給者であっても、生活保護費以外の収入があれば、所得税や住民税(市民税・県民税)が課されますし、土地や家屋を所有していれば固定資産税が課されます。住民税や固定資産税がいったん課税された上で、生活保護の生活扶助費(生活費)受給者は免除を受けることができる。このように税法上定められています。
 
それではSさんの質問にお答えしましょう。 

生活保護受給者へ住民税の課税通知が来た時の対応策とは?

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Sさんあてに住民税の納税通知が来た本当の理由は分かりません。仕事の開始時期、給料の増減、生活保護の開始時期など、様々な可能性が想定されるので、ここで理由を断定することはできません。しかし、対応策は決まっています。
 
現在、生活扶助費(生活費)が支給されているのであれば、住民税が課税されても、免除されます。ただし、すでに課税されている住民税については免除の申請が必要です。
 
具体的には、課税した自治体の住民税窓口で免除申請手続きを行うことになりますが、手順や必要書類は自治体によって異なりますので、担当ケースワーカーへ相談しましょう。一般的には生活保護の受給証明書や保護決定通知書を住民税窓口へ提示することになります。 

住民税と所得税の生活保護上の取扱いの違い

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生活保護受給者の住民税は免除される

生活保護を受給し生活扶助費(生活費)が支給されていれば、住民税は免除されます。
 
生活保護受給前まで給料から住民税を源泉徴収されていた場合、生活保護を開始すると源泉徴収が行なわれなくなります。ただし、生活保護を開始して源泉徴収が止まるまでにはタイムラグがありますので、免除申請が必要になる場合も多いのです。
 
余談ですが、住民税が非課税になることは、会社の給与事務担当者には知られてしまいます。つまり、給与事務担当者は、その人が生活保護を受給し始めたことを推測できることになります。これは現在の税制上、避けられない部分です。
 

生活保護受給者でも、所得税は課税される

生活保護を受給し生活扶助費(生活費)が支給されていても、所得税は課税されます。
 
生活保護受給者であっても、収入額に応じて、給料から所得税が源泉徴収されるのです。しかし、給料を収入認定する際に、税金分を必要経費として控除しますので、生活保護費の計算上は影響ありません。
 

生活保護受給者が確定申告するメリットは?

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生活保護受給者が確定申告をすると、どうなるのでしょうか。する意味があるのでしょうか。
 
生活保護受給者の給料から源泉徴収された所得税が戻ってきた場合、「収入」として福祉事務所へ申告する必要があります。
 
生活保護受給中に受け取った給料から源泉徴収されていた所得税は、生活保護費を計算する際に必要経費として織り込み済みなので、確定申告で還付されても控除対象とはなりません。つまり、還付金全額が収入認定され、還付額と同額だけ生活保護費が減額されるのです。
 
生活保護受給者が確定申告をするメリットがあるのは、生活保護受給前に受け取った給料から源泉徴収されている場合です。保護受給前に源泉徴収された所得税が還付されれば、ある程度手元に残るので、メリットがあると言えそうです。
 
なお、ここでは確定申告をするメリット・デメリットの観点から解説しています。確定申告をの必要性については所得税法上の問題点のため、ここでは解説できません。詳しく知りたいかたはお近くの税務署へお尋ねください。
 

まとめ

  1. 生活保護受給者の住民税は免除。何らかの理由で課税された場合、免除申請を行えば免除される。
  2. 生活保護受給者でも、生活保護費以外の収入には所得税が課税される。ただし、所得税は必要経費扱いになるので、生活保護費には影響しない。
10年ワーカー
税金の免除規定は、生活保護法上の制度ではなく、それぞれの税法上定められているので、ケースワーカーもあまり詳しくないのが実情です。

ケースワーカーの説明に納得がいかない場合は、税金の担当窓口へ直接相談してみるほうがいいでしょう。