病気を理由とする生活保護受給者の転居。主治医とケースワーカーへの上手な相談方法とは。


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生活保護受給中のYさん
高額家賃を理由として一度転居したのですが、転居先で隣人の騒音に悩まされています。騒音が原因で体調が悪化し、心療内科へ通院中です。医師の意見書なり診断書をもらえば役所は引っ越しを認めて、転居費用を出してくれるのでしょうか?
10年ワーカー
近隣住人の迷惑行為で病状が悪化したので転居したいという相談、ケースワーカーであれば誰もが一度は受けたことがあるでしょう。ただ、その対応は一筋縄ではいきません。順を追って説明しましょう。

生活保護受給者でも転居は自由

まずは原則の話から。生活保護受給者でも転居は自由です。居住移転の自由として憲法第22条で保障されています。
 
ただ、転居するにはお金がかかりますし、その工面が難しいことから、生活保護受給者の場合は、転居費用を支給できるかという問題になるのですね。
 
生活保護法では、転居のために敷金等を支給できる17の場合が定められています。
 
17個の条件を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧いただくとして、今回は17個のうちの一つ、「病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合」ついて詳しく説明します。
 
今の生活環境について、「病気療養上著しく環境条件が悪い」と主治医が認める場合、必要に応じて福祉事務所が転居費用を支給することになります。ちなみに、近所の人の騒音に困っているだけでは、転居費用を支給する理由にはなりません。
 

主治医には、「転居が必要」と言い切ってほしい

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しかし、「病気療養上著しく環境条件が悪い」では表現が抽象的過ぎます。生活保護費という公金を支給する以上、主治医に対してより具体的な判断を求めます。
 
では、相談者Yさんの事例で説明しましょう。
 
Yさんは隣人の騒音に悩まされています。その騒音を理由の一つとして心療内科へ通院中です。
 
この場合、主治医が「Yさんがここへ住み続けた場合、騒音により病状がさらに悪化する可能性が極めて高いため、転居が必要である」という判断をしてくれればOKです。
 
ここで「転居が必要である」とまで主治医が言ってくれればいいのですが、「転居が望ましい」程度の表現の場合、福祉事務所の判断は微妙です。「転居が望ましい」程度では、「著しく」環境条件が悪いとまでは言えないのではないか。福祉事務所がそう判断することはあり得ます。
 
このように、主治医の判断が福祉事務所の判断に大きな影響を与えるのです。福祉事務所としても主治医の意見は無視できません。
 

今の環境条件を主治医に分かってもらうには

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このように主治医は転居費用支給の鍵を握るのですが、主治医が実際にYさんの家を訪ねてきて住環境を確認することは通常ありません。結局、Yさんの隣人の騒音がどの程度であり、それによってYさんがどれだけ病気療養に支障を来しているかを、Yさん自身が主治医に対してしっかりと説明し、転居が必要な状況であることを主治医に理解してもらわなければなりません。
 
主治医も患者の言うことを100%鵜呑みにはしません。何が事実で何が患者の思い込みなのかを見極めようとします。このあたり、主治医も難しい判断を迫られるのです。
 
こう聞くと、主治医を説得するのか、とため息をつかれるかもしれません。でもそれほど心配する必要はないでしょう。基本的に主治医は患者の味方ですから、上手に話を聞き出して要点を整理してくれるのではないでしょうか。・・・全員がそんなお医者さんではありませんが。。。
 

同じ理由で2回目の転居は難しい

時々、同じような理由で再び転居の相談をしてくる方がいます。例えば、近隣住民の騒音が理由で転居費用を支給して3ヶ月後、また同じ理由で転居の相談をしてくるケース。
 
こういう場合、2回目の転居費用を支給することは難しいでしょう。仮に主治医が2回目の転居の必要性を認めたとしても、福祉事務所が転居費用は支給する可能性は低いです。
 
なぜなら、最初に転居費用を支給した理由が隣人の騒音だったのですから、転居先を決めるにあたっては、騒音を出す隣人がいないかどうかを、事前に大家さんや不動産屋にしっかりと確認しておくべきだったのではないですか?と言う話だからです。このあたりは常識的な判断になります。
 
Yさんの場合、最初の転居は高額家賃が理由ですから、今回とは転居費用支給の理由が異なります。したがって、転居の必要性について主治医の判断が得られれば、転居費用が支給される可能性は高いでしょう。
 

主治医が転居の必要性を認めた後の流れ

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主治医が転居の必要性を認めてくれたら、担当ケースワーカーへそのことを伝えましょう。するとケースワーカーは主治医へ事実確認を行います。保護受給者が診断書を取得する必要はありません。診断書の取得には文書料もかかりますし、事実確認はケースワーカーの仕事ですから。主治医の所見に間違いないことを福祉事務所として確認できれば、内部決裁を経て転居費用が支給されます。

病状を理由とした転居費用支給の手続き

  1. 保護受給者本人から主治医へ現在の生活環境を説明し、このままでは治療を続けても病気が悪化するので転居が必要であることを納得してもらう。
  2. 転居費用の支給について担当ケースワーカーへ相談する。この際、主治医からは病気療養上転居が必要であると言われていることを伝える。
  3. 担当ケースワーカーが主治医へ事実確認を行なう。
  4. 敷金等の支給申請書類を福祉事務所へ提出。
  5. 審査・決裁後、敷金等及び転居費用が支給される。
10年ワーカー
敷金等と家財運搬費用を合わせると、転居費用は高額になる場合が多いので、ケースワーカーも慎重な姿勢で臨みます。転居の相談については、ケースワーカーから色々な質問を受けると思いますが、聞かれたことに対して、一つずつしっかり説明しましょう。事情を理解したケースワーカーはあなたの味方になってくれるはずです。
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