生活保護受給者向けアパート家賃の上手な値付けとは?


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生活保護受給者向けアパートを経営するSさんから質問をいただきました。
大家のSさん
生活保護受給者を想定した単身者向けアパートを持っていますが、長期間空室があり困っています。

家賃は住宅扶助(家賃分の生活保護費)の基準額(上限額)以内に抑えて、設備も値段に見合っていて、特に問題はないと思うのですが。

  
10年ワーカー
空室が長期間続いてしまうと厳しいですよね。家賃は基準額内とのことですが、そのアパートの所在地の基準額と家賃、それぞれいくらですか?
大家のSさん
このアパートが立地するA市では、単身の生活保護受給者の場合、住宅扶助の基準額は36,000円です。そして、このアパートの家賃は31,000円です。
  
10年ワーカー
なるほど。。。これでは生活保護受給者の入居は難しいかもしれませんね。
大家のSさん
え!どうしてですか!?
 
A市の住宅扶助の基準額は36,000円。そして、家賃が31,000円。一見すると、お得な物件と言えそうです。しかし、生活保護受給者はお得だとは感じません。なぜでしょうか。
 
生活保護受給者の場合、基準額内の家賃であれば住宅扶助費が全額支給されるからです。つまり、役所が認めれば、家賃が31,000円であっても、36,000円であっても、保護受給者の懐具合に変わりはないのです。
 
すると、どうなるでしょうか。
 
役所からお金が出るのだから、家賃の上限ぎりぎりで、できるだけ環境が良くて設備も整っている物件に住みたい。そう考えて、住宅扶助の基準額ギリギリの物件を探すのです。
 
つまり、A市の単身の生活保護受給者にとって、31,000円という家賃は魅力的ではないのです。
 
大家のSさん
では、値上げした方がいいですか?
  
10年ワーカー
そのまま値上げしても、環境や設備は31,000円レベルでしょうから、魅力的な物件とは言えませんよね。

設備面での魅力をアップしてみませんか?

大家のSさん
エアコンはすでにありますから、洗濯機でも付けましょうか。
  
10年ワーカー
洗濯機よりも冷蔵庫がおススメです。それには理由があります。
 

生活保護世帯向け住宅に備え付けるべき備品とは

もちろん、実際の入居者が望む物がベストなのでしょうが、入居者が変わるたびに希望の家電製品へ買い替えるのでは経済的ではありません。
 
物件の価値を上げるために準備すべき備品、まずはエアコンです。最近は保護世帯でも、エアコンを備え付けてあることが多いです。
 
エアコンは、設置費用を含めるとそれなりの金額がかかるので、生活保護受給者が自分で購入するのは大変です。したがって、エアコンが設置してあれば、部屋探しの際は有利になるでしょう。
 
ところが、今回のSさんの物件では、すでにエアコンは設置されています。そこで、次にお薦めするのは冷蔵庫です。
 
生活保護申請時に住居がない方などに対しては、アパート等への入居に際し、最低限の生活用品を購入するための費用として、家具什器費が支給されます。炊事用具や食器等を想定しており、上限が27,800円です。
 
家具什器費の対象として認められるのは、炊飯器、鍋、やかん、簡易な棚などです。冷蔵庫、電子レンジ等については家具什器費の対象外です。
 
冷蔵庫・電子レンジ等は、保有することは認められており、欲しければ自分でお金を貯めて買ってください、という位置づけなのです。
 
物品ごとの取扱い
炊飯器、鍋、やかん、簡易な棚 保護申請時に所持していない場合に支給する。ただし、上限額あり。
冷蔵庫、エアコン、洗濯機など

購入費用は支給しないが、所有・使用はOK。

(参考)自動車

原則として所有・使用とも不可。
 
「生活保護手帳別冊問答集2016」(中央法規)より抜粋
 
問7-45 家具什器費の支給対象品目
(問)
保護開始時、長期入院・入所後の退院・退所等において、冷蔵庫、電子レンジ等の保護受給中に保有が容認されている物品を保有していない場合、これらの物品を家具什器費の支給対象としてよいか。
(答)
日常生活に必要な物品については、本来経常的な生活費の範囲内で、計画的に購入すべきである。
 
そこで備え付けるべき家電製品として考えられるのは、家具什器費の対象にならない冷蔵庫、洗濯機、電子レンジあたりになります。この中でも必要性が高いのは、冷蔵庫でしょう。冷蔵庫がなければ、日常生活にも支障をきたすのは明白です。
 
洗濯機はコインランドリーで代用できますし、電子レンジがないと不便とは言え、冷蔵庫がないよりはましでしょう。
 
 
大家のSさん
エアコンよりも冷蔵庫の方が生活には欠かせませんから、冷蔵庫の方が優先順位は高いのではないですか?
  
10年ワーカー
いいえ、やはりエアコンを優先すべきでしょう。家賃が36,000円の物件の場合、エアコン付きが当たり前だからです。他物件と同じ土俵に立つための必須アイテムと言ったところでしょうか。

また、エアコンは、設置費用まで含めると小型冷蔵庫より高くなります。小型冷蔵庫なら買えるけど、エアコンは買えないという生活保護受給者は多いですよ。

大家のSさん
では、冷蔵庫を備え付けて、家賃は36,000円に上げてみます。ところで、こうして家賃を上げることで問題はないのですか?
  
10年ワーカー
この事例の場合ですと、入居時に支払う敷金等について、問題が起きるかもしれませんね。
 

家賃を上限額に設定した場合の問題点とは

通常、A市において36,000円の物件を契約する場合、敷金として3ヶ月分、不動産仲介料として1カ月分+消費税が必要です。
 
つまり、敷金等として146,880円(=36,000×3+36,000×1.08)かかります。
 
ところが、A市の単身の生活保護受給者の場合、敷金等の上限額は140,400円です。
 
つまり、上限額を超えた6,480円(=146,880円ー140,400円)が自己負担になってしまうのです。一般の人であればこの程度の自己負担は問題ないのでしょうが、保護受給者の場合はそれすら難しい場合があります。
 
したがって、入居費用を割り引くなどして、敷金等の上限額内に抑える必要があるかもしれませんね。
 

まとめ

  1. 家賃は住宅扶助の基準額(上限額)に合わせる。
  2. 家賃が同額の他物件にはない備品があれば有利。まずはエアコン、次に冷蔵庫。
  3. 入居費用は、支給される敷金等の上限額の範囲内に収まるように、値引きも検討の余地あり。
10年ワーカー
冷蔵庫が欲しいけれど買えない保護受給者。私が現在担当する方の中にもいます。食べ物の保存ができないので、食費が割高になってやり繰りが大変そうです。エアコンと冷蔵庫が付いた物件、増えてほしいですね。
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