アパートの契約更新料、支払った後に申請できる?生活保護費の遡及支給とは。

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生活保護受給中のNさん
半年前にアパートの契約更新料を支払いました。

最近になって、契約更新料は生活保護から支給されると知りました。

そこで担当のケースワーカーへ相談したのですが、3ヶ月以上前のことなので今さら支給できないと言われました。これって、何か根拠があるんですか?  

10年ワーカー
生活保護費の遡及支給ですね。実務上もよく相談されます。説明しましょう。 

支払う前に申請をするのが原則 

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Nさんの言うとおり、借家の契約更新料は一定の要件を満たせば住宅維持費として支給できます。(こちらの記事で取り上げています。)
 
ただし、福祉事務所は申請を受けてから必要性を調査します。(申請による保護の変更・生活保護法第24条)
 
今回の場合、Nさんから「契約更新料を支給してほしい」という申請があってから、福祉事務所は支給の必要性を調査するのです。 
 

契約更新料は「認定して差し支えない」 

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法令上、家賃は「認定すること」と規定されています。(厚労省社会・援護局長通知第7-4-(1)-ア)
一方、契約更新料は「認定して差し支えない」と規定されています。(同第7-4-(1)-ク)
 
つまり、家賃については必要な額を認定しなければならないので、ケースワーカーから保護受給者へ家賃額を確認します。家賃額の変更についても、資産申告書で定期的に確認するのです。
 
一方、契約更新料については必要な額を認定してもいいとなっているので、保護受給者から相談がなければ、わざわざケースワーカーから積極的に確認することはありません。
 
 
今回、Nさんはすでに手持ちの生活費で更新料を支払い済でした。
すると福祉事務所としては、保護受給者から相談はないし、生活費のやりくりで支払えたのだから、それで話は終わりですね、ということになるのです。
 
ただし、契約更新料を支払うために水道代を後回しにして、その水道代が払えていない、ということもあり得ます。このような臨時出費が生活費のやりくりに影響する期間について、国は2ヶ月前までを目安としています。 (参考:生活保護手帳別冊問答集 問13-2)
 
先に契約更新料を払ったけれど、そのために先月の水道代が支払えず、生活費のやりくりができていないようだ。仕方がないので、2ヶ月以内であれば後払いで契約更新料を支給しましょう、ということです。
 
なお、3ヶ月以上さかのぼって支給しないのは、生活保護費支給決定に対する不服申立てが決定後2ヶ月前までしかできないことも、理由の一つです。
 
ちなみに、「2ヶ月前まで」の考え方ですが、正確には「発見月からその前々月まで」です。
Nさんからの事後相談が4月にあったとして、更新料の支払いが2月だったなら、事後で申請できたということです。
 

結論、そして奥の手は? 

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今回のNさんの場合、正面突破は難しそうです。
しかし、方法が全くないかというと、そうでもありません。
 
上の説明を逆手にとって、3ヶ月以上経っても生活費のやりくりができていないことを証明するというのはどうでしょうか。
 
今回の事例の場合、契約更新料を生活費から支払ったせいで、3ヶ月前の水道代が支払期限を過ぎても支払えないような状況なら、水道代の請求書を持参して担当ケースワーカーへ相談してみるのです。例えば、
 
「福祉事務所が契約更新料を出してくれないのでこの水道代が支払えません!このままでは今週末で水道を止められます!!小さな子どもがいるのに、一体どうすればいいんですか!!!」
 
これが事実の場合、仕方がないので今回限り、ということで、さかのぼって契約更新料が支給される可能性もゼロではないでしょう。
 
逆に言えば、これぐらい切迫した事例でないと認められないということですが。。
 
10年ワーカー
生活保護の制度を知らないことで損している保護受給者はたくさんいます。

どの福祉事務所でも生活保護制度を説明するしおりを作成してます。もし、手元になければ担当ケースワーカーからもらいましょう。

生活保護は申請主義、自分の権利は自分で守る意識が大事です。