長期入院患者が外泊。外泊中に支給される飲食物費とは?

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保護受給中のAさん
入院が1ヶ月を超えると、生活扶助費が減額されますよね?
  
10年ワーカー
はい、そうです。入院中の食費は医療扶助に含まれているので、その分食事代と光熱水費がかかりませんよね。このため、生活扶助費が減額されるんです。
保護受給中のAさん
実は、入院中の妻が外泊という形で数日間帰宅します。
妻の帰宅中は、当然、自宅で食事をしたり、入浴することになります。食材費やガス代、水道代がその分余計にかかりますが、生活扶助費は元の額に戻るのですか?
  
10年ワーカー
生活扶助費が元の額に戻るのは、退院した場合だけです。入院中に外泊する場合、生活費は減額されたままです。
保護受給中のAさん
では、外泊中にかかってくる食材費やガス代、水道代の増加分は生活をさらに切り詰めなくてはいけないのですか?
 
10年ワーカー
いいえ、そんなことはありません。このような場合の食材費や光熱水費を賄うために「飲食物費」という制度がありますので、説明しましょう。
 
 

長期入院中の外泊時に支給される飲食物費とは

外泊期間中の患者の生活扶助費は減額されたままですが、本来の生活扶助費のうち、飲食費に相当する額と燃料費に相当する額が「飲食物費」として日割りで支給されます。
 
外出先はその患者が属する世帯には限りません。知人宅に外泊する場合でも同じ取扱いになります。
 
これは本来役所が当然に支給すべきもので、保護受給者からの申請が必要なわけではありません。しかし、通常、担当ケースワーカーは入院患者の外泊の状況を把握していないので、もし外泊した場合は積極的に担当ケースワーカーに連絡した方がいいでしょう。
 
根拠規定は、生活保護手帳別冊問答集「問7-33」、生活保護手帳「局第7-2-(3)-イ」です。また、東京都生活保護運用事例集「問6-11」にもあります。
 
この制度、結構マイナーなので、担当ケースワーカーの中にも知らない人が多いかもしれません。もしケースワーカーから「そんな制度はない」と言われたら、根拠規定を説明してあげましょう。
 
金額の計算は担当ケースワーカーにお任せで構いませんが、参考までに具体例で説明します。
 

具体例

東京都23区において、入院中の35歳の妻が夫と子ども2人の世帯に3泊4日で外泊した場合

数式は次のとおりです。
 
飲食物費={妻の第1類×0.75+第2類(4人分ー3人分)×0.2}×3/30
      飲食費相当分     燃料費相当分
 
金額を当てはめてみます。
飲食費相当分:38,430円(妻の第1類)×0.75=28,822.5円
燃料費相当分:(61,620-59,170)×0.2=490円
 
28,822.5+490=29,312.5
29,312.5×3/30=2,931.25≒2,931円
 
このケースの場合、妻の3泊4日の外泊中の飲食物費として2,931円が支給されます。
 

まとめ

  • 入院が1ヶ月を超えると、生活扶助費が減額される。
  • 生活扶助費の減額中に外泊する場合、外泊期間中の飲食費と燃料費相当が支給される。
  • 外泊先はその患者が属する家はもちろん、知人宅でも構わない。
  • 担当ケースワーカーは入院中の外泊について通常把握していないので、保護受給者からケースワーカーへ外泊の事実を伝えるほうがよい。
 
 
10年ワーカー
この制度って知らない保護受給者が多いだろうし、支給額の計算は面倒くさい。自分の担当する保護受給者がイチイチ外泊を報告してきたら面倒だなあ。それを敢えて記事にする自分って、かなりいい人かも。