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生活保護における扶養届書の書き方と記入例。質問のウラにある役所の事情とは?


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読者のNさん
私の妹夫婦が生活保護を申請しました。私のところに扶養届書という書類が送られてきたのですが、書き方が分かりません。役所から送られてきた書類には、いくつも質問が書いてあります。どう記入すればいいのでしょうか。
  
 
 
10年ワーカー
扶養届書にはありのままを書けばいいのですが、やはり質問の意図が気になりますよね。では、質問のウラにある役所の事情を説明しましょう。

扶養届書の書き方

Nさんの自宅には2つの書類が届きました。
 
1枚目は「扶養届書」というタイトルで、きれいに印刷された書類。
2枚目は、ワープロで作った質問用紙。
 
まず、1枚目の「扶養届書」を解説します。
 
「扶養届書」は全国で書式がほぼ統一されています。これが国が定めたひな形です。記入例をゴシック体で記入してみました。記入方法を順に説明します。
 
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1.精神的な支援について

 
「精神的な支援」とは、簡単に言えば、金銭と物の仕送り以外でできること全て、です。
 
例えば、電話をかける、手紙を送る、メールを送る、LINEを送る。
 
これらは全て「精神的な支援」になります。
 
生活保護受給者は金銭的に困窮しているのはもちろんですが、家族との関係が悪かったり疎遠になっているかたが多くいます。
 
特に、独り身の高齢者の場合、親族との連絡が途絶えていると、体調悪化時の病院受診が遅れたり、最悪の場合孤独死の可能性もあります。
 
もし、精神的な支援が無理な場合でも、電話番号は記入してほしいのです。
 
一人暮らしの高齢者が死亡し、親族の電話番号が誰一人分からず、遺体の取り扱いに苦慮するケースが増えています。
 
このような時、もし親族が遺体を引き取れなくても、「親族が遺体を引き取らないことを確認できた」というだけでも、福祉事務所としてはその後の手続きを進めやすいのです。

2.金銭的な支援について

 
「金銭的な支援」とは、金銭や物の仕送りです。
 
もし、金銭や物の仕送りをすでに行っていたり、これから開始する場合は、開始時期と月額(分量)を記入してください。
 
なお、金銭を仕送りする場合は、その分だけ生活保護費は少なくなります。福祉事務所としては助かりますが、生活保護を受ける本人の手取り総額は変わりません。
 
物を仕送りする場合、米・野菜・魚などは金銭換算し、その分だけ生活保護費が少なくなります。
 
一方、し好品(酒、たばこ、茶菓など)、衣類、衛生用品、最低限の生活用品、燃料(灯油など)などを仕送りする場合は、生活保護費に影響がない場合があります。(生活保護手帳別冊問答集:問8-29)
 
このあたりの実務は福祉事務所によって異なる可能性がありますので、詳しくは扶養照会元の福祉事務所へお尋ねください。

3.私の世帯について

 

(1)家族構成・収入等の状況

扶養照会が届いた方の家族の状況を記入してください。
 
扶養照会のあて先になっている人を「本人」として1行目へ記入します。2行目以降は本人以外の同居家族を記入します。
 
「平均月収額」はおおよその手取り額で構いません。よほどの高額所得者でない限り、回答内容について福祉事務所から問い合わせがいく可能性は低いです。
 
ただし、扶養義務者が公務員で金銭的援助ができないと回答した場合は、福祉事務所から問い合わせがいく場合があります。 

(2)資産の状況

自宅を含む不動産の所有状況を尋ねています。この欄の回答について問い合わせをした事例を私は知りません。あまり厳密な回答は求められていないと考えて、差しつかえないでしょう。 

(3)負債の状況

住宅ローン、教育ローン、自動車ローンなど、借金の状況を尋ねるものです。これらは金銭的援助の難しさを裏付けることになり、福祉事務所としては「金銭的援助がないのも仕方ないか」と判断する根拠になります。
 
しかし、「返済の終了予定」を過ぎてから、もう一度扶養照会をする可能性があります。もう住宅ローンの返済は済みましたよね?金銭的援助できませんか?というわけです。

 (4)健康保険等の加入状況

扶養照会の対象となった生活保護申請者(または生活保護受給者)を扶養に入れていないか確認するものです。
 
もし生活保護申請者を扶養に入れていれば、その人の分だけ扶養手当を多く受け取ったり、税法上の扶養控除を受けて税額が低く抑えられていることになります。
 
扶養手当の分だけ収入が増えたり、扶養控除の分だけ税額が低くなったのだから、いくらか仕送りできませんか?というわけです。
 
なお、扶養義務者の健康保険に生活保護受給者を入れるのは、福祉事務所としては助かります。生活保護における医療費負担が10割から3割へ減るためです。
 
扶養義務者の健康保険の保険者(健康保険組合や全国健康保険協会など)側で問題なければ、生活保護受給後も健康保険加入のままとしてください。

記入上の注意

欄外に「記入上の注意」と書いてあります。皆さんが気になると思われる「収入、負債の状況については、源泉徴収票、給与明細書、ローン返済予定表の写しなど、その状況が明らかになる書類を添付してください。」について解説します。
 

収入と負債の状況については、証拠となる書類(源泉徴収票やローン償還表)を付けるよう書いてあります。もちろん提出することが望ましいですが、提出がないことで福祉事務所から問い合わせをする可能性はかなり低い、とだけお伝えしておきます。 

扶養届書以外の問い合わせへの回答

 冒頭のNさんのように、通常の「扶養届書」以外に、福祉事務所が独自で様式を作成し、扶養届書と同封している場合があります。
 
質問内容は福祉事務所ごとにバラバラなため、今回はNさんに届いた内容について、解答例を作成してみました。
 
①同居の意思  あり  なし
 
②入院時の保証人  なる  ならない  
 ならない場合、その理由
 
③万一の場合
 葬祭の執行  します  できません
 できない場合、その理由:親が葬儀を行うため。
 
④緊急時の連絡  要する  要しない 
 要しない場合、その理由
 
福祉事務所はどういう意図で尋ねているのでしょうか。答え方次第でその後どうなるのでしょうか。順に説明しましょう。 

①同居の意思

Nさんが保護申請中の妹夫婦を引き取って、金銭面を含めて面倒を見る意思がない限り、「同居の意思なし」とすべきでしょう。
 
「同居の意思あり」と回答した場合は、いつから同居するのか、と福祉事務所からお尋ねの電話が入ります。
 
原則として、生活保護は一つ屋根の下で暮らしている人達全員に生活保護を適用するか、全員に生活保護を適用しないか、どちらかです。同居するとなると、Nさんを含めて生活保護を適用するかしないか、という判断を迫られることになります。 

②入院時の保証人

「なる」でも構わないでしょう。
 
生活保護を受けていると、医療費は生活保護費と保護受給者本人の収入(給料や年金)により賄います。したがって、生活保護受給者の入院保証人になっても、医療費を被るようなリスクはありません。
 
したがって、ここでの保証人とは、連絡先の意味合いが強いです。病院によっては保証人がいないと入院を受け入れたがらないところもあります。Nさん以外に入院保証人になる方がいなければ、「なる」としてあげてよいでしょう。 

③葬祭の執行

葬祭の執行には、「喪主として葬儀を執り行う」ことと、「葬儀費用を負担する」ことの二つが含まれています。
 
Nさんと別に、両親のところにも扶養調査があっていると思います。もし両親が葬儀を執行すると答えるなら、Nさんは「執行できない」と答え、できない理由は「親が行なうから」で構わないでしょう。
 
あくまでも、現時点でのNさんの意向を聞いているだけですから、今の時点で「執行する」と答えていても、万一妹さんが亡くなった時点でNさんの事情が変わっていれば、やはり葬儀はできない、とその時点で役所に伝えても問題ありません。
 
地域にもよりますが、葬儀を行うには、最低でも20万から30万程度の費用がかかります。
 
葬儀の執行者に生活保護を適用し、葬祭扶助として葬儀費用を出せる制度もあります。しかし、そのためにはNさん自身が生活保護を申請し、保護が決定することが前提ですので、必ず葬祭扶助が支給されるというものではありません。
 
また、生活保護の決定には14日から最大30日かかりますので、その間は葬儀社への支払いもできないわけです。葬祭扶助は、あまりあてにしない方がいいでしょう。
 
※一人暮らしの生活保護受給者が死亡した場合の対応について、こちらの記事にまとめていますので、興味のある方はご覧ください。 

④緊急時の連絡

「要する」で構わないでしょう。
 
緊急時の連絡は、生活保護受給者が何か事件に巻き込まれた、長期間行方不明、などの場合に福祉事務所からあります。万一の際に連絡が付きやすい人、連絡があったらすぐに動ける人を緊急連絡先としておくのがよいでしょう。 

扶養調査を行う理由とは

生活保護を申請すると、福祉事務所から保護申請者の扶養義務者(親、兄弟、子ども)に対して扶養調査書を送ります。
 

なぜ扶養調査を行うのでしょうか。

 
それは、親・兄弟・子どもからの援助は生活保護よりも優先、と法律で決まっているからです。(生活保護法第4条第2項)
 
このようなきまりがあるため、福祉事務所としても親・兄弟・子どもから援助が受けられるかどうかを確認せざるを得ず、そのために扶養調査を行うわけです。
 
福祉事務所としては、正直なところ扶養調査は気が進みません。費用対効果がとても悪いからです。扶養調査書を送っても、返信があるのは半分程度です。返信があったとしても、金銭的援助(仕送り)を行うという回答書はゼロに近いです。
 
このため扶養調査の実質的な意味は、緊急連絡先の確認にあります。住所については、戸籍調査を行なえば役所でも確認できるのですが、電話番号を調べる手段がないのです。
 
扶養調査書を提出した後のことについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。 

まとめ

  1. 扶養調査の項目には、「精神的な支援」と「金銭的な援助」がある。
  2. 「精神的な支援」と「金銭的な援助」はできる範囲で構わない。無理はしなくてよい。
  3. 公務員や高額所得者でない限り、全ての質問を「できない」と回答しても、福祉事務所からお尋ねがあることは少ない。 
10年ワーカー
このご時世、福祉事務所としても金銭的な援助は、正直期待していません。扶養照会が、扶養義務者の関係改善のきっかけになれば嬉しいですね。
 

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コメント

  1. 伊藤隆造 より:

    たいへん参考になりました。
    ありがとうございます。