扶養調査へ回答する際の扶養届書の上手な書き方。質問のウラにある役所の事情とは。


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読者のNさん
私の妹夫婦が生活保護を申請しました。私のところに扶養届書という書類が送られてきたのですが、書き方が分かりません。役所から送られてきた書類には、いくつも質問が書いてあります。どう記入すればいいのでしょうか。
  
 
 
10年ワーカー
扶養届書にはありのままを書けばいいのですが、やはり質問の意図が気になりますよね。では、質問のウラにある役所の事情を説明しましょう。

扶養届書記載の確認事項

Nさんの自宅に届いた扶養の届書には、次の4つの確認事項がありました。
 
①同居の意思  あり  なし
 
②入院時の保証人  なる  ならない
 ならない場合、その理由
 
③万一の場合
 葬祭の執行  します  できません
 できない場合、その理由
 
④緊急時の連絡  要する  要しない
 要しない場合、その理由
 
ちなみにこの4つの質問は、扶養調査の”おまけ”部分です。扶養調査の本体は、「扶養届書」というタイトルの書類で全国的に書式がほぼ統一されています。これが国が定めたひな形になります。
 
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そしてこの「扶養届書」の中の「1.精神的な支援について」に関して、その福祉事務所の判断で、さらに突っ込んだ質問として、最初に掲げた4つの質問をしたものと考えられます。
 

扶養調査を行う理由とは

そもそも、なぜ扶養調査を行うのでしょうか。
 
それは、親・兄弟・子どもからの援助は生活保護よりも優先、と法律で決まっているからです。(生活保護法第4条第2項)
 
このようなきまりがあるため、役所としても親・兄弟・子どもから援助が受けられるかどうかを確認せざるを得ず、そのために扶養調査を行うわけです。
 
役所としては、正直なところ扶養調査はしたくないんです。それは費用対効果がとても悪いからです。扶養調査書を送っても、返信があるのはせいぜい半分程度です。そして返信があったとしても、金銭的援助(仕送り)を行ないます、という回答書は皆無です。
 
このため扶養調査の実質的な意味は、緊急連絡先の確認にあります。住所については、戸籍調査を行なえば役所でも確認できるのですが、電話番号を調べる手段がありません。結果として、扶養調査の回答書の一番の目的は電話番号の収集にあると言えます。
 

 扶養届書の上手な書き方

生活保護を申請すると、役所から保護申請者の扶養義務者(親、兄弟、子ども)に対して扶養調査書を送ります。
※ 扶養調査書を提出した結果どうなるのか、詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
 
扶養調査の項目には、大きく分けて「金銭的援助の可否」と「精神的支援の可否」があります。
 
Nさんからの質問にある4つの確認事項は、いずれも「精神的支援の可否」に関するものですね。この扶養調査書、簡単に言えば、次のようなお尋ねなのです。
 
「Nさんの妹さんから生活保護の申請がありました。妹さんは生活に困っているようですので、Nさんから妹さんへ仕送りができませんか?(=金銭的援助の可否)もし、仕送りが無理なら、他に何かしていただけませんか?(=精神的支援の可否)」
 
では、質問の①から④について、解答例はこのようになります。
 
①同居の意思  あり  なし
 
②入院時の保証人  なる  ならない  
 ならない場合、その理由
 
③万一の場合
 葬祭の執行  します  できません
 できない場合、その理由:親が葬儀を行うため。
 
④緊急時の連絡  要する  要しない 
 要しない場合、その理由
 
 
では、役所はどういう意図で尋ねているのでしょうか。答え方次第でその後どうなるのでしょうか。順に説明しましょう。 

①同居の意思

Nさんが保護申請中の妹夫婦を引き取って、金銭面を含めて面倒を見る意思がない限り、「同居の意思なし」とすべきでしょう。
 
「同居の意思あり」と回答した場合は、いつから同居するのか、と役所からお尋ねの電話が入ります。
 
原則として、生活保護は一つ屋根の下で暮らしている人達全員に生活保護を適用するか、全員に生活保護を適用しないか、どちらかです。同居するとなると、Nさんを含めて生活保護を適用するかしないか、という判断を迫られることになります。
 

②入院時の保証人

「なる」でも構わないでしょう。
 
生活保護を受けていると、医療費は生活保護費と保護受給者本人の収入(給料や年金)により賄います。したがって、生活保護受給者の入院保証人になっても、医療費を被るようなリスクはありません。
 
したがって、ここで言う保証人とは、死亡した時の引き取り先程度の意味合いです。病院によっては保証人がいないと入院を受け入れたがらないところもあります。Nさん以外に入院保証人になる方がいなければ、「なる」としてあげてもよいでしょう。
 

③葬祭の執行

葬祭の執行には、「喪主として葬儀を執り行う」ことと、「葬儀費用を負担する」ことの二つが含まれています。
 
Nさんと別に、両親のところにも扶養調査があっていると思います。もし両親が葬儀を執行すると答えるなら、Nさんは「執行できない」と答え、できない理由は「親が行なうから」で構わないでしょう。
 
あくまでも、現時点でのNさんの意向を聞いているだけですから、今の時点で「執行する」と答えていても、万一妹さんが亡くなった時点でNさんの事情が変わっていれば、やはり葬儀はできない、とその時点で役所に伝えても問題ありません。
 
地域にもよりますが、葬儀を行うには、最低でも20万から30万程度の費用がかかります。
 
葬儀の執行者に生活保護を適用し、葬祭扶助として葬儀費用を出せる制度もあります。しかし、そのためにはNさん自身が生活保護を申請し、保護が決定することが前提ですので、必ず葬祭扶助が支給されるというものではありません。
 
また、生活保護の決定には14日から最大30日かかりますので、その間は葬儀社への支払いもできないわけです。葬祭扶助は、あまりあてにしない方がいいでしょう。
 
※一人暮らしの生活保護受給者が死亡した場合の対応について、こちらの記事にまとめていますので、興味のある方はご覧ください。
 

④緊急時の連絡

「要する」で構わないでしょう。
 
緊急時の連絡は、生活保護受給者が何か事件に巻き込まれた、長期間行方不明、などの場合に福祉事務所からあります。したがって、よほどのことがない限り、役所から連絡が来ることはありません。万一の際に連絡が付きやすい人、連絡があったらすぐに動ける人を緊急連絡先としておくのがよいでしょう。
 

まとめ

  1. 扶養調査の項目には、大きく分けて「金銭的援助の可否」と「精神的支援の可否」がある。
  2. 金銭的支援と精神的援助はできる範囲で構わない。無理はしなくてよい。
  3. よほどの高所得者でなければ、扶養届を送り返さなくても、また、全ての質問を「できない」と回答しても、生活保護の決定に影響はない。 
10年ワーカー
扶養義務者にすれば、身を削って保護受給者に仕送りをしても、その分保護費が減らされるだけで、保護受給者本人の生活が楽になるわけではない。

こんな制度なら、もし私が扶養義務者だったとしても、仕送りはしないでしょう。国が扶養義務者による仕送りを期待していないことの現れですね。

 
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コメント

  1. 伊藤隆造 より:

    たいへん参考になりました。
    ありがとうございます。