家賃滞納にお困りの大家さん必見!大家が役所から直接家賃を受け取る方法。住宅扶助の代理納付制度とは。

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アパートの大家さんから質問をいただきました。
 
「入居者が、生活費に困っていて家賃も滞納しがちです。生活保護を申請させたいのですが、どうすればいいでしょうか。」
 
大家にとっては、せっかく入居者がいても、家賃を滞納されては困りますね。負のイメージが付きまとう生活保護ですが、実は、生活保護受給者だからこそのメリットもあります。
 

生活保護受給者を入居させるメリットとは

1.家賃を役所から大家へ直接支払える

生活保護費のうち、住宅扶助(家賃に相当)については、本人を通さず、役所から大家へ直接支払うことができます。これを住宅扶助の代理納付といいます。これが最大のメリットでしょう。
 

2.何か問題が起きた際に、ケースワーカーを頼れる

大家が親族関係を把握していない入居者が死亡した場合、親族の住所や連絡先を役所が把握しているので、連絡が取りやすいです。身内が誰も葬儀を行わない場合は、役所で葬儀等を行なう場合もあります。(身寄りがない生活保護受給者の葬儀についてはこちらの記事をご覧ください。)
 

住宅扶助の代理納付を活用するための手順とは

では、冒頭の大家さんからの質問への回答です。家賃を滞納しがちな入居者に生活保護を受けさせるには、どうすればいいのでしょう。これには4つのポイントがあります。

1.入居者には生活保護を申請する意思がありますか?

問題になるのが、この入居者に生活保護を申請する意思があるかどうかです。生活保護は、申請する意思のない人へ強制的に適用することはできません。意識不明で入院した場合など、申請意思の確認なしに保護を適用する場合もありますが、あくまで例外です。
 
もし、本人に申請する意思があるけれど、何らかの事情で役所まで行けない場合は、親族(親、兄弟、子ども)が代わりに申請できます。本人が書いた申請書を役所へ持参する場合は、親族でなくても構いません。役所まで申請に行ける人が誰もいない場合は、役所の担当者が自宅や入院先まで来て申請を受け付けることもできます。
 

2.生活保護が決定したら代理納付の申請をしましょう

生活保護が決定したら、住宅扶助(家賃)の代理納付を申請しましょう。これは大家さんが申請しますが、通常、本人の同意書が必要です。代理納付が決定すると、家賃が役所から大家へ直接振り込まれますので、滞納のリスクが低く、取り立ての手間もかかりません。
 
ただ、滞納のリスクは低いのですが、ゼロではありません。それは、受給者の中には、代理納付をできない人もいるためです。
 
代理納付ができるのは、住宅扶助費が支給されていることが条件です。例えば、年金額が多いために生活保護費が少ない場合には、代理納付をできない場合があります。具体例で説明しましょう。
 
具体例:平成28年度の東京都区部に住む68歳の一人世帯、家賃53,000円の場合
例1:収入は老齢基礎年金月額65,008円の場合
最低生活費 月額133,870円(生活費80,870円、住宅費53,000円。医療費は除く)
収入額 65,008円
133,870-65,008=68,862
生活保護費 68,862円(生活費15,862円、住宅費53,000円)
このうち、生活費15,862円が本人へ支給され、住宅費53,000円が大家へ直接送金される。
 
例2:収入は老齢厚生年金月額100,000円の場合
最低生活費 月額133,870円(生活費80,870円、住宅費53,000円。医療費は除く)
収入額 100,000円
133,870-100,000=33,870
生活保護費 33,870円(生活費0円、住宅費33,870円)
この33,870円は全額が本人へ支給(※または大家へ送金)される。
(※福祉事務所によって異なる)
もし33,870円が大家へ送金される場合でも、家賃53,000円との差額19,130円は大家が本人から直接受け取る必要がある。
 

3.家賃額は住宅扶助費の基準額以内ですか?

生活保護が決定すると、住宅扶助費の基準額以内の物件へ住む必要があります。もし、現在の家賃が住宅扶助費の基準額を超えている場合は、家賃を基準額まで値下げする必要があります。
 
値下げしない場合、役所は転居を指導しますので、その入居者はその物件から出て行ってしまいます。なお、住宅扶助の基準額は自治体ごとに異なりますので、最寄りの福祉事務所までお尋ねください。
 

4.部屋の広さは15㎡以上ありますか?

住宅扶助費の基準額は、部屋の広さが15㎡以上あることが条件です。15㎡未満の場合は、もっと低い基準が適用されるので、設定できる家賃額もさらに低くなります。
 
また、15㎡以下の物件の場合、環境面に問題があると役所が判断することがあります。そうすると、役所が本人へ転居を指導する場合もあります。
 

まとめ

住宅扶助(家賃)の代理納付制度を上手に活用するためには、
  1. 入居者自身に生活保護を申請する意思が必要。
  2. 生活保護が決まれば、役所から大家へ家賃を送金できる。ただし、生活保護以外の収入(給料、年金、手当など)があると、その金額次第では家賃を直接送金できない場合がある。
  3. 家賃はその自治体の基準額以内であること。
  4. 部屋の広さは15㎡以上あること。
 
10年ワーカー
家賃を滞納する入居者にお困りの大家さん!家賃額が住宅扶助基準額の範囲内であれば、最寄りの役所の生活保護窓口で相談するように入居者へ勧めてくださいね。本人と大家、両方が助かるかもしれません。
 

コメント

  1. にっしー より:

    非常に勉強になる記事です!参考にさせて頂きます!!大家をやっている身としては、所得が低い方でも極力入居して頂きたいのですが、いかんせん滞納が心配ですので、その点行政が介入してくれる生活保護受給者の方は大家としてはリスクを一つ減らせるので有難いです。しかし滞納のリスクは無い(厳密には低減ですか)のですが、やはり生活保護受給者という言葉を聞くと、どうしても何か事情がある方(この場合は悪い意味で)なのではないかと心配してしまいますし、リスクが高いと判断してしまう事も(一般的に)多いのではないかと感じます。是非とも今後の記事で、生活保護受給者の実態(良い面、悪い面の両方)を書いて頂ければなーと個人的には感じました。長文失礼致しました。また更新(私のこのコメントはさて置き)を楽しみにしております。